「遠い遥かな道」

 

             佐 藤 悟 郎

 

 

君は一体何を悩んでいるのだ

小さなことに心を痛めることはない

ただ素直に心に従えばよいことだ

 

歌の道は歌を奏でるしかないだろう

険しき道とは知っていることなのに

明るく瞳を上げ優しく見つめることだ

 

人は寂しく 心は豊かなものだ

君もそうだし行き交う人もそうだ

ただ君は貧しき心を持っている

 

そうだ 君の貧しき心は君を苦しめた

幾度となく 夜も昼も君を苦しめた

君は耐えることも 戦うこともなかった

 

君はただ 訳もなく貧しさを恐れ

行く道さえ見失い泣くばかりだった

君は光に向かうことすら知らなかったのだ

 

光は 君にも誰にでも降り注ぎ

そして 求める者の心を温めるだろう

君の貧しさは光に背を向けることなのだ

 

君の悩む道には 他の道はない

光に向かっていくただ一筋の道しかない

君は時々背を向けて迷うだけだ

 

光がどこかに逃げるのではない

君がどこかに迷い込むだけなんだ

光を見失わないようによく見るのだ

 

光は君の良心の中にあるのだ

どこを見渡しても見えないだろう

良心は君にも誰にも与えられたのだ

 

君は歩き始めている 確かな歩みを

遥かな道はまだ遠くまで続くだろう

途中で倒れてもよいと君は思っているか

 

最初に道を求めた人は心に定めを持った

人は定めに従いながら生きるものだ

君も歩きながら定めを持つことだ

 

暖かい美しいそして優しい定めをだ

良心に従う定めはそれだけで良いものだ

そして定めに従うことをすることだ

 

光は君を導いていくだろう

多くの優しい美しい暖かいところへ

そして君はもう悩むことはないだろう

 

 

         平成三年一月二十日