リンク:TOPpage 新潟梧桐文庫集 新潟の風景 手記・雑記集



  

    「懐疑の中に激情を」

 

        佐 藤 悟 郎

 

 

 今まで、私は生きてきた。幾年後、私に死が訪れて終わりになるだろう。そうだ、何もかも終わってしまうのだ。未来があるとか、魂があるとか、疑わしいことだ。

 

 死に至るまで、どうして思いのまま生きていけないのだろうか。やっかいな現実に引き戻される。人間に加えられた重荷、死んでしまえば、何もかも終わりなのに。死ぬまで生きろ、と誰かが命令する。まるで生きていることが無意味だ。

 

「俺は、これから死ぬよ。君とも、俺とも、さようならだ。」

 

 何で人は生きているのだろう。目的は、何だろうか。多くの人が、今まで死んだ。私の知っているのは、単なる知識でしかない。

 

 自分の存在しない世界は、無意味だ。自分の喜びを得られない世界は、無意味だ。たとえ、人の存在を非難しようが、生きている限り、生き長らえなければならない。自分の存在について、何れ決着することを考えなければならない。

 

 人の生と死の間に、私は疑いを持っている。死滅してしまえば、全てが消滅してしまう。生きていた証、世界の歴史、全ての未来も、幻の如く消えてなくなるのではないだろうか。人の生とは、幻という世界が、人を迎えただけなのではないだろうか。

 

 無意味な懐疑の世界、このことは私を悩まし続けるに違いない。自分の生き様の不確かさ、死に逝く自分に何が必要であるのか。いかなる目的も、何の意味を持つということになるのだろうか。