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「創作と現代」
佐 藤 悟 郎
私は文学の道に入っているが、その実感がない。日も浅いためと慰めなければならない。ことの実感を自分自身の問題と真剣に受け止め、解決しなければならない。
作品の創作には、突き当たる問題がある。何を創作するのかという問題である。哲学が「哲学とは何か」と疑いを抱くように、創作する者も「文学とは何か」と疑いを抱かなければならない。
文学者は、単なる思想家とは異なる。著述を宿命としなければ意味がない。殊に現代の小説は、懐古的な著述が多い。現代から昔を見ると、思想的な咀嚼が容易であることが原因していると思われる。
文学者の根本的な立場は、少なくとも「自我」でないのではないか。現代に生きている立場が「自我」である。現代の中でものを考えるべきである。
娯楽的な著述がある中で、昔のことを現代風に表現しているものがある。事実から程遠く、滑稽ささえ窺える。文学者とは言えない、意識の低いものに見える。
現代に愛想を尽かし、事実であり得ない幻想的な昔に逃れているように思われる。現代の文学者は、現代を見つめ現代を書かなければならない。現代の現実は何であるのか、そこに潜む問題が何であるのかを考えるべきである。
現代の現実に文学的な要素を加える。感覚と意味付けを行い、永続性があるかどうかを確かめる。思考が自由であることは論を待たないが、現代に生きていることから目を反らしてはならない。
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