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「作品論」…その全体的基礎…

 

      佐 藤 悟 郎

 

 

 芸術的価値ということが、あらゆる文芸において問題となる。これは、作品全体に対する価値論である。大きく言って、見方の相違がある。

 一つは、他者の観点、もう一つは、自己の観点ということになる。創作者の考えなければならないことは、自己の観点である。即ち、意見、見識を持つということである。芸術を論ずる場合、その対象となるべきものは、決して個々であるのではなく、作品の総体であることは明白である。特に、その中心と成すべきものは何か、ということを考えなければならない。

 芸術家としての自己の目に適合しうる作品が最低の条件となる。これ故に、芸術を志す者は、その総体から構築しなければならない。

 

 対象とすべきその物が、芸術となり得ない物であってはならない。単なる技術的な物であるとしたら、何の価値もないであろう。漠然と、その具象との間に、鋭い感覚を抽出していかなければならない。

 

 全体的かつ芸術的な表象、それは形をとるもの、抽象的感覚的なもの、様々あると思われる。しかし、全体的な表象無しでは、芸術的活動に着手することはでき得ないし、着手しても、それは芸術でも何でもないだろう。

 

 創作の手法も、これに類することがあると思う。全体的に芸術性のないところには、創作を試みても無駄である。創作に着手する時の、全体的かつ芸術的意思が大切なことに気付くだろう。如何にしてそれを育ててゆけばよいのだろうか。これは重要な問題であり、活動の中の中心的な問題でもある。これを解決していかなければならない。