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「小説の書き方」

 

      佐 藤 悟 郎

 

 

過去の作品の整理をしていると、草稿として終わっている、中途半端な作品が目につく。将来、大作とするつもりで手掛けたが、挫折したものである。このような中途半端な作品は、創作活動や精神活動の障害となっている。原因を探ってみると、創作方法の誤りが認められる。創作が中断に追い込まれるのは、全体的な構想がないためである。草稿は、草稿でしかないことをはっきりと認めなければならない。創作する上で、草稿は必要ないのでないかとも思われる。

 

 草稿あるいは推敲という考え方、これは中学校、高校時代に教えられた、文章の書き方である。草稿や推敲を軽視する訳ではない。草稿を一歩進め、草稿そのものが作品として価値を有するものにする、と言う考え方である。

 

 草稿そのものが完成作品とすべきもので、それを基礎に大作に向けて作り上げていく。作品に作品を重ねることによって、最高の作品と成長させると言うことになる。最初の作品は、粗筋だけになってしまう可能性があるが、全体を抱擁する点において有効な方法に間違いない。中途半端より、前進すると考える。同じ題名の作品が、姿を変えて多く作られることも考えられる。総体的に、数が増すごとに、より良い作品となると考えられる。

 

 注意しなければならないことは、草稿作品を放棄するのでなく、注意深く完成させる努力をすることである。主題は作品の生命であり、明確に浮き立たせる必要がある。作品であるからには、始まりと終わりがある訳で、構成が中途半端にならないように注意すべきである。

 

 作品の失敗は、草稿がないこと、あるいは草稿そのものが中途半端なことから生じている。創作には、難しい点が多くあるが、それを克服する考え方は必ず存在するはずである。