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「言葉と文字」
佐 藤 悟 郎
昔、物語は、人の口から口へと語り継がれたものである。人は、文字を持つ以前に、言葉を持った。文字は、言葉の記憶を留めるための象形、あるいは記号でしかなかった。時が経ち、人は文字ばかりに気を取られ、語ることを忘れてしまった。机の上に紙を載せ、文字の組み合わせばかりやることが多くなった。文字は、文字でしかない。言葉ではない。
物語は、言葉を書くことである。言葉の中には、人の心が入ってくる。人が言葉を口にする時、多かれ少なかれ、感情を込めて語ってくる。生きた文章とは、まさに人の言葉から始まっている。作品を読む時、誰が読もうとも、素直に心に入ってくるのは、人の言葉だけである。
私が悩むことはない。言葉を綴ることを考えればよいことだ。考え方の根本を改め、正しい言葉が口から出るように、私自身を鍛えることである。言葉が、人の心の現れだとすれば、人は心を大切にしなければならないだろう。
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