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「創作のための意思」

 

佐 藤 悟 郎

 

 

 作品の中の意思、多くは、これが作品の生命となる事実に、着目しなければならない。

 意思、言い換えれば、思想、恣意的な事柄である。その柱となるべきものの形成を忘れて、作品を作ろうとすることは無意味に等しい。

 創作の多くは、外観的活動を指すと思われるが、総体的に言って、文章に表し得ぬ、全体の意思がなければならない。

 私が、作品を創作するに当たって、最も吟味しなければならないのは、作品意思の検討である。その意思が、自己の反映、自己の信ずるに値する人間の反映であるか、どうかということである。

 

 人は、教育されたところに従ってきた。自分が、人に対する教育の照り返しての、自分が果たして人の真実を捉えることができるかどうか疑問である。創造的意思の現出、それも人にとって大切なものを現出することは無理なものであるかも知れない。

 私の今までの作品に欠けていることは、その主題の不明確さ、その意思の検討の欠陥であると断ずることができる。そこには、終わりなき作品の創造しか、結果として出てこない。

 

 創作する者の活動、文学作品活動には、作品を創造すると同時に、その意思に対する検討も重要な要素であり、意思の探求は、直ちに創作作品になって現れる可能性が大きい。

 物事に対する考察の重要性が、まさに文学者として存在する由縁はここにある。それを文学としての意思を隠蔽することは、技術的なことになる。