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「春の随想」

 

佐 藤 悟 郎

 

 

 春が訪れ、信濃川河畔の「やすらぎ堤」に春の日差しが満ちていた。家族連れで訪れている人々の姿が、明るい日差しの中で楽しげに躍動している。何回目の春を迎えたことだろう。そのたびに齢を重ね、春が過ぎてゆくのを惜しむ思いが強くなった。年老いたためだと諦めるしかない。

 

 春といえば桜の風景が思い出される。新発田での加治川堤の桜、長岡の上組小学校校庭や悠久山の桜、小千谷の船岡山の桜、新潟の白山神社の桜など多くある。桜が過ぎると谷卯木の花の時となる。信濃川の崖渕に赤い花が乱れ咲いている。その地の思い出は消えることがない。美しく甘く光り輝いた時代であり、そして青春の終焉を迎えた時代でもあった。

 

 過ぎ去ったことをいくら飾り立てても答えが返ってこない。思い出は大切にしなければならない。特に良い思い出と、悪い思い出を尊重し、これからの人生に生かしていかなければならない。人生を全体的に見れば、転機があることが分かる。毎日の生活を中心に、どのように行動をしたのか深く考えなければならない。現在の姿が果たして惨めなものであるのかも検証をしていかなければならない。

 

 中学校時代に近所の市営住宅に杵渕さん、本間さん、星野さんの家族が住んでいた。また、同じ町内に音楽の宮先生、石坂飾り屋さんの家があった。多くの人に出会ったようにも思う。雑然とした中で私小説的に書いていくことは適当ではない。