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「大晦日の陽は傾き」

 

新潟梧桐文庫 佐藤悟郎

 

 

 午後三時を過ぎた。部屋から外を見ると、降り積もった雪に鈍い日の光が注いでいる。本年の大晦日を迎えたのだと思った。この一年、仕事に忙殺されたけれど、みるべき結果はなかった。全て、私の努力が足りなかったと諦めなければならない。

 

人生に対する恨みは確かにある。そんな恨みを抱いたまま年を越すことはできない。反省すべきは反省し、これからの人生を生甲斐のあるものにする努力をするべきだと思う。仕事のことだけではない。生活のこと、家族のことなど多くのことを適切に対処しなければならない。

 

 雲間に、太陽の光が差し、机の上の手元を明るくした。悪い兆候ではない。人間、人生に対し考え方次第でどのようにもなる。妻にホームページを立ち上げる話をしたが、馬鹿にされてしまった。私の書いた物を発表しても、誰も読まないだろうということだった。確かにそうであるかもしれない。しかし、手を拱いて人生を終わるようなこともしたくはない。何かを真剣に行わなければならないと思った。

 

 物事を大きく考えなければならない。余りにも小さな世界で考えると、世の中が詰まらなくなる。能力の問題もそうである。どれだけの知識が必要であるかは分からないが、学問的な知識だけが尊いものではない。そんなことをも考え、新しい年を積極果敢に生きていかなければならない。

 

 考えてみれば、自分がどれだけ優れた者だっただろうか。世の中は広く、優れた人が多い。過去の多少の能力を過大評価して過ごした私である。全てがそうである。満足に結果を出しているものはない。優れた人はそれなりに努力をしている。然るに、私には努力という形跡があっただろうか。特に、最近の行動や精神の乱れが大きいことを深く反省をしなければならない。

 

 人生行動の基礎は、正しい精神の存在である。誤った精神から、正しい行動は生まれてこないし、結果が生ずることもない。困難が控えている。その困難を今まで放置してきたのではないだろうか。仕事のためといって、文学活動や邦楽活動を放置したばかりか、家庭への配慮もいい加減にしてきたのではないだろうか。そのようなところから、人生全般の結果は生まれてこない。仕事上の成果がなければ、全てが終わりということになってしまう。そのような生き方を決して容認してはならない。

 

 常に明るい希望をもつことである。希望のために、結果を恐れず努力することである。ことに、妻の言うことをよく聞き、妻の精神的な負担を軽くするようにしなければならない。近い将来、退職をすることになる。退職後は、妻と一緒に生活をしなければならない。夫婦共に活力ある人生を送るために、特別な配慮を今からしていかなければならないと思う。

 

                  平成十四年十二月 大晦日