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「山と空」 山古志中学校池谷分校一年生

 

 

 

 

 以下、昭和四十年十一月十二日収録したものです。


「山と空」  

山はだんだん寒くなる
葉は落ち
木々は白くなる
木々はみんな寒そうだ
そのうえ
空は楽しそうだ
日本晴れはとてもきれいだ
そのうえ
山はみんな雪でたれていく
山の空とはだいぶちがう
山は空よりかわいそう
そのうえ
空は山より楽しそう
山はやっぱりだんだん
たれさがっていく

「霜」  

朝起きて外をながめたら
外に霜がおりていた
外にでて霜に指をつけ
あ!
冷たい 雪みたい
みんなが寝ているうちに
霜がおりたのだな
草が真っ白
草は冷たいと言っているみたいだ
霜がおりて
草は冷たいと言っている
体がこおる たすけてよ
と草が言った

「雪」  

雪は 綿のようだ
でも その綿はつめたい
もくもくとふる
雲が小さくなって
落ちてくるように
雪がふるのを
じっと見ていると
私が空に上がっていくようだ
雪はとてもきれいだ
足でふむとぶつぶつと
音がして とてもおもしろい
雪はすきだけれど
つめたいから
あまりすきではない

「一〇〇点のテスト用紙」 

返してもらった 一〇〇点のテスト用紙
じっと見れば紙 紙である
その紙を見る
うれしい よかった
ふり返って テストの前のあの日
十二時まで勉強やったっけ
一枚の紙
その紙は ただのものではない
一〇〇点のもの
この紙を見れば 勉強を思う
テストの前の日のことが
頭にうかぶ
こんどのテストもこの調子
こう思う
だれでもそうだ
勉強やればいいんだ
そうすれば もう一枚の
一〇〇点のテスト用紙がもらえる
自分に対して大事な
一〇〇点の用紙 いつもねらう一〇〇点の用紙

「冬」  

初雪がふると
ただ一面
真っ白け
小さい子
よろこび
にわでさっそく
おままごと
大人たまげて
たまなとり

「今年の盆」  

今年のお盆は
うちにだれもこない
ほかのうちには おおぜいさ
にわで きゃーと言っている
私のうちは しいんとして
とてもさびしい

「冬」  

目が覚めた
窓を開けたら わたぼうし
葉が一枚二枚 クモの糸に
ささえられているように
しんとした中で
車も走っていた道も
わたぼうし

「今年の盆」  

八月十五日の盆は 僕は八時ころ
出かけて十五分でついた
花火を上げた そしてみなも買った
ぼくはそれを見ていて花火は
なぜあんなにきれいなのか
けれど ぼくの思った盆より
おもしろくなかったので 家へ帰った

「盆おどり」  

盆おどり
若者たちは つら まっか
子供たちは 店の前で
やっとこ おどりだす

「まつり」  

一年でも 一つとしてまつ
この盆踊り
太鼓に かけ声合わせ
みんなで楽しむ
その夜の ひととこは
みんな元気で いっぱい
また来年

「今年の盆」  

盆がきた 盆がきた
踊る おとなたち
おとなたち
よほどおどるのが すきなのだ
ぼくはそうかんがえた


「今年の盆」  

今年の盆は おもしろくない
泊まりにきた人は おどらない
村の人たちだけだった
こどもは店で おかいもの
青年は ちょうちんもっている
今年の二十三日の盆は おもしろい
村の人たちだけで おどった
私たちも おどった
もう十二時だと 人は言った
さあ はやくはやくおどれ と言った
みんながおもしろそうに おどった

「盆」  

盆は八月十五日の晩 多い人たちで
賑わう晩 いつも青年が酒を出し
男の人たちにすすめる
「おいこら」と
よっている男の人たち

「去年の盆」  

盆が来る
みんなのうれしい
盆がくる

「盆」  

盆になると 大勢が泊まりにくる
そのときみやげをもってくるので
とてもうれしい
夜になると大勢が集まってきて
おどってくる とてもおもしろい

「今年の盆」  

八月十五日は盆だ
ぼくは盆踊りを見に行った
あまり大勢の人がいない
花火を上げたりした 楽しかった
お金を百円くらいしか つかわなかった
十一時ころになってから 家に帰った
家に帰ってから思った
もう一寸いればよかったのになあと

「今年の盆」  

おどっている人
みている人
みんな疲れを忘れている
いつもと変わって さわいでいる

「今年の盆」  

今年の盆
がやがやとさわがしい盆
小さい子 大きい子 大人
いろいろの人が おどっている
みんなにこにこ楽しいな

「今年のお盆」  

今年のお盆は とてもおもしろかった
みんな
キャアキャアという声
太鼓の音
ドンドンとなる音
みんな太鼓の音と
おどる にぎやかさ
今年のお盆は とても
とってもおもしろかった

「盆おどり」  

夕はんを食べながら
そわそわ
母 いそいで台所のしたく
したくのおそいこと おそいこと
私は外に出てみて
また中に入ったり
暗い道
あかりが ぽつん
ああ また一人が行った
母は田中の家
私は十二山
アツ子さんと十二山を
うろうろ
くじを引いて
時間をまぎらわしていた
田中の家へ行った
また 十二山へ行った
人は全然集まらない
またそのへんをうろうろ
くじをかって引いた
全然だめ
人は集まらない
くじはだめ
今夜は全然ついてない
やっとぼつぼつと
人が集まってきた
にぎやかになりそうだ
でももう時間だ

「今年の盆」  

花火を上げた
杉の木のてっぺんまで
シュウシュウと
音を立ててあがった
花火がチラチラと
光って消えた
太鼓は休まず
ドンドンドン…となっていた
店のまわりは
ずらりと並んだ
子供たち
とてもにぎやかな
盆だった

「今年の盆」  

夜太鼓の音が聞こえてきた
八幡様からだ
外に出てみた
八幡様の大きな木が
よくみえる
歌声も聞こえてくる
さあ行こう

「今年のお盆」  

最初におどった あのおどり
いや おどりではない
あるいたのである
円の中に入り
大人の人のうしろにつき
足だけまねをする
あの私のすがた
こんな楽しいことで
あの夜は おわった

「今年の盆」  

東京の一家
長岡の二家
私の家に
ぞろぞろときた
私の家は七人家族
長岡組は一組が三人
もう一組は二人
東京の人は五人
小さい家はおおさわぎ

「盆」  

盆は人が大勢あつまる
真ん中で青年が太鼓をたたく
酒をのんだ人がよっぱらって
おかしなおどりをやる
おかあさん おとうさんも
おどっている
みんな楽しそうだ
おどっている
私は盆がだいすきだ

「今年の盆」  

盆は人が大勢あつまった
店もたくさんきた
まん中で青年が太鼓をたたく
わたしはおどりをみたり
なにかを買ったりする
とてもおもしろい
私は盆が大好き

「今年の盆」  

今年のお盆はおもしろい
みんなが太鼓に合わせ
おどっている
店でなにかを買う人も
たいこにあわせて
おどるひとも…
ドンドンと太鼓なる
ぐるぐると輪になって
太鼓といっしょに
おどっている

「お盆」  

十一時ころになれば
ドンドン太鼓の音
こえをはりあげて
歌う人
輪になって
色とりどりの着物
私たちは帰る

「今年の盆」  

初めて輪に入った
少々おぼえた
来年も入りたい
早く盆になれ
早く盆になれ

「冬」  

あたり一面
まっ白に
はじかむ手をして
スキーかづく
学校までは
帰りはよいが
行くのはいやだ
途中でぶつかって
ころぶのもあれば
スイスイ走るのも
冬はいいのだろうか

「去年の冬」  

去年は雪がいっぱいふった
空を見れば
黒いようにふってくる
窓の外からのぞいてみれば
スキーでのってくる人も
上手にのってくる人も
途中でステンところぶ人も
ころべば真っ白
雪だるま
つめたいつめたいと
いっている
授業が終わり
くる人 くる人
ストーブのまわりで
わをかいて
あたたかいあたたかいと
よろこんでいる

「去年の冬」  

初雪がふった
みんながふるえている
ストーブがない
私は冬がだいきらいだ
スキー大会もある
スキー大会もだいきらいだ

「去年の冬」  

道をふむ
かんじきをはいて
雪の上を歩く
あるくとズボッと
音がする
道ふみは わたしのやくめだ

「去年の冬」  

大雪だった 去年の冬
みんな春を待っている
北風がびゅっと吹いてくる

「去年の冬」

去年の冬の あの雪は
四メートルもつもった
その雪の上を
学校へ行くときなど
ずしんずしんと ふんだっけ
寒さに負けず 元気な子
あのたくましい子供たち
いまでも頭の中に 残っている

「去年の冬」  

兄は毎朝 早く起きる
道ふみに行くのだ
私が寝ていると
家の うらべで
ググ…ググ…
と雪の音が聞こえてくる
たくさんつもった時など
つらいだろう
でも今年は
私がやらなくてはならない
兄が卒業したからだ
しっかりやろう

「去年の冬」  

とても寒かった
首にマフラーをまいて
真っ赤なほっぺたをして
雪の中で遊んだ
スキーにのって
スイスイと走ったと思ったら
ステンところんだ
起きてみたら ころんだあとが
へこんでいた
つえの先とスキーの先に
雪をのせてきて
バサッと穴の中にまけて
あなをうめた
またのった
今度はスキーが
前にザクッとささって
またころんだ
手が雪の中に
ズボッとうまった
とてもつめたかった
手がどうにかなりそうな
感じがした

「去年の冬」  

私は去年の冬
どんなことをしたのだろうか
あ そうだ
スキー大会のとき
びりから三位になったっけ
その日はかぜをひいていたっけ
その前の日は休んだ
母は何度も何度も
私に「行くな」と言った
でも私は
そんなことを聞かないで
家を飛び出した
走っているとき
坂を登るとき
苦しかったし
疲れたし
何回か立ち止まったっけ
人はどんどん私をぬいていった
坂をおりるとき
風を切る
かおがひりひりする

「今年の冬」  

雪ほり
まっしろにつもる雪
山の上にもまっしろの雪
山にのぼって
ザックザックという音
下におりれば
バサバサという音
家では雪がいやだという
父母の声
雪はやっぱりみんなの
いやな雪だ

「去年の冬」  

雪はパラパラふってくる
見れば見るほど
白くなって下に落ちていく
雪も一人ひとりの心があるのだ

「去年の冬」  

そこら中が銀世界だ
銀世界の上をすべる
その気持ちは ばつぐんだ
まるで高速道路だ
また上る
いきぎれがする
また下る
つかれがふきとぶように
風を切って下る

「今年の冬」  

冬休みのとき ぼくと康雄と
スキーにのったりした
いしり山のてっぺんからのった
一回はころんだ
全部で七回くらいのった
二〜三回のると自信がついて
ころばなくなった
とてもおもしろかった

「今年の冬」  

初雪がふったとき
ぼくは外に出て遊んだ
そのとき大勢が遊んでいた
雪を投げて遊んだり
暗くなるまで遊んだりした

「去年の冬」  

冬が来る 寒い冬が
みんな寒くて こたつに入る
寒い冬が来る

「冬」  

あたり一面白くなる冬
つめたくて仕事もよくならない
ふぶきは ピッピッといって
しょうじの紙がやぶけたところから
はいってくる

「今年の冬」  

どこの家も雪ほりだ
私の家も雪ほりだ
みんながどすんどすん
と雪をおとす
おわるとためいきをつく
一日かかかってほる
雪は やっぱりいやだなと思う

「道ふみ」  

朝おきれば道ふみ
みんなが通る道だ
じょうずにつける道
みんなが通っても
うまらないようにつけなければ
学校までくる道はつめたい
家をでてくるのはいやだと思う道
いやいや通る道
さむいさむいと 通る道
だれでも通る道
いやな道
道は いろいろある

「去年の冬」  

雪がぼそぼそふってくる
雪が旗のようにふってくる
その中を一人の百姓が歩いている
いつになったらつくのやら

「冬」  

おもわず手にいきをかける冬の朝
かんじきはいて ぎっしぎっしと
そのときの手
外にだせず ポケットの中

「冬のねどこ」  

ねどこは ぼんやりとあたたまっている
その床から起きるののいやさ
みんながわかる
なんといっていいか
その起きるまでのいやさ
朝めしになる
ねどこのなかに もぐっている

「スキー」

ステンところんだ
スイスイとのった
スキーのすべったあと
二本の線
とちゅうで大きな穴
みんな にこにこして
すべっている

「冬」  

ピューピューと風が吹く
ときたま かたいあられがふる
つめたいほほにぶつかる
そこだけがへこむ
毎朝 多く雪が玄関の
戸の前につもる
また この雪をのけて
力いっぱい ふまなければならない
雪はいやだ ほんとうにいやだ
毎朝 寒いとき起きて
かんじきをはいて ふまなければならない
そして ぼくのお母さんみたいに
しんけいつうなのに いっしょうけんめいに
ゆきほりをやる
雪がふれば みんながエネルギーを
むだにしなければならないのだ
だから雪はいやだ

「今年の冬」  

ぼくは 今年の冬は
朝 いつも道ふみをした
そうしたら ある日一人のあしあとがあった
もう出たのかと思った
ぼくはすぐお母さんだと思った
そしたら やはりお母さんだった
ぼくはすごいなと思った

「盆踊り」  

雨の盆おどり
あたま かおに
ぽつん ぽつん
「は」盆おどりというのに
おおぜいの人が かおを上げる