リンク:TOPpage 新潟梧桐文庫集 新潟の風景 手記・雑記集 「母」 山古志中学校池谷分校一年生
以下、昭和四十年十一月二十七日収集
「母」
夜おそく 夜なべをして お母さん その横顔は まるで老人 ほほはおち ひたいにしわが ふかぶかと
「けんかしながら」
けんかしながら 窓みれば 木の葉ちりゆく おもては 霜でまっしろ
「冬来」
もうすぐだ 冷たい冬が やってくる
「秋の山」
秋の山 木の葉おちては ガサガサと どの木をみても
「鯉」
色とりどりの 鯉のむれ 大きい鯉 小さい鯉も まじわって およいでいる
「初雪」
初雪がつもるつもる どんどんと つもっていくぞ 初雪だ
「冬の山」
冬の山 あたり一面 白くそまった 秋の山
「冬の山」
あたり一面 まっしろっけ 道に足あと いろいろな どこまでつづく 足あとよ とおく とおくへ 消えていく ひとつふたつと 消えていく
「冬の空」
冬空や きれいな星や ひかっている
「こたつ」
こたつに入る ぽかぽかと 足をあたため 足かゆい おもわず出した つめたいな また足入れる
「寒い朝」
寒い朝 外はまっしろ こな雪だ その中を かんじきはいて もくもくと
「こめとぎ」
夜 こめをとぐ ザクザクと てがつめたくて おもわず 手にいきをかける
「山見れば」
山見れば 木の葉ちりたり もう冬だ 寒い冬だぞ 外仕事は おわったんだぞ 家の中では 冬がこい
「山の色」
山の色 だんだん茶色に なっていく 木々もかれ しろくなり だんだんたれて いくだろう
「雪の中」
雪がふる だんだんさむく なりかける 子供は外で 犬も外で 遊んでいる チュンチュンと とびまわる
「冬景色」
冬げしき みんなぶるぶる さむそうに ふるえている
「小石」
小石たくさんある みんな愉快そうに 口がないので話せないのだ 互いに ぶつかり合ったりしている でも一人ひとりの心はあるのだ
「雨」
雨がふると どこも汚れる 雨が降ると いやだなと思う 遊んでいるときも 草や木のそばにいくと よごれる だからいやだと思う
「柿」
柿はうまいよ ぜったいうまい 秋になると赤くなる みんなうまそう 鳥もたべるよ みんなもたべる
「帰り道」
私と姉は 田中の家の帰り道 急ぎ足で歩く 私は姉の後ろ 姉は私の前を歩いていた 私は知らぬまに 足がだんだんと 早くなってきた 母もなぜか 急ぎ足になっていた 私は姉を越す 姉は また私を越す 私たちは だまって 急ぎ足で歩いた 夜風がつめたい まだどこの家も 明かりが ともっていない その家の前の道を 私と姉のくつの音だけが ばしゃばしゃとなる 私はふと 立ち止まった だれかが私たちの後ろを 歩いているようだ 後ろをふり返った でもだれもいない 私と姉は また歩き出した 暗闇の中を ぽつんと 懐中電灯の光が 遠くまでてらす
「山」
魚沼の三山を 朝 学校から見た 青い山のまわりが きりでつつまれていた あの山のてっぺんに 登って あたりを 見渡したら どんなに 気分がいいだろうな などと感じて見たら 本当にのぼりたくなった とてもけしきがよかった
「山道」 芳則
まきを背負って山道を 汗かきかき登る ひたいの汗を 手ぬぐいで 山のけしきを見ながら 足を止め 腰をおろして 山は日にてらされ しだいに日の光はうすらいだ 「さあもう一息」 父の声で足が動いた わが家に向かって前進だ
「ネコ」
ぼくは猫をだいた そしたら毛がついた ぼくは猫の毛は どうしてとれるんだろうと思った 猫はひげがいちば だいじだ 猫は手をくすぐっても 気にしない ぼくはどうして 気にしないんだろうと思った
「秋の空」
朝 晴れ渡る空 雲一つない天気だ 秋の空はよく変わる またすぐ 雲が現れる 雲はだんだん多くなる 空いっぱいにもなる 空はきたなくなる
「農家の子」
夜近く こやしを背負って 家に向かう 来る時は寒かった 今はもうあったかい 早く休むところにつきたい 背が低いのに 荷負いさせられては… 農家の子には なりたくない
「ラーメン」
とてもさむい 外はビュービューと風が吹いて ぼくは家の中で熱いラーメンを食べる ツルツルと口の中に 長いラーメンがすべりこむ あまりうまいので 一本ずつ食べる 一度に食べるよりも 一本ずつ楽しく食べたほうがいいや
「杉の木のように」
なまり色の空の下 楢の木は 枯れ木のよう ブナの木も カエデも みんな 枯れ木のようだ だが… 杉の木の緑は かわらない いつものように いきいきとした 力強い色 私の好きな きれいな色 こがらしの吹く中に じっと立っている 楢の木も ブナの木も カエデの木も みんな 葉を落としてしまった その間に 勝ちほこったように 立っている そうだ 山の子だ くじけちゃいけない たとえ生活かんきょうが 悪くとも あの杉のように 強く正しく 生きるのだ
「父親」
ぼくが学校にいた むこうの曲がった道のところから すっぽん笠をかぶり 蓑をきて 雨のふる悪い道をくる とても早足だ 手を冷たそうにしている でもその片手に 黒いコーモリをもっている 子供をむかえにきたのだなと思った その老人は キョロキョロと 見渡した いなかったらしく 肩をすぼめ 背中をまるくして しょぼしょぼと もときた悪い道を 前に歩き出した
「天気のよい山の上にねころぶ私」
天気のよい山の上に 私は ごろりとねころんだ 上に見えるのは 空 雲広々と 雲までのびのび広々と いったい この空はどこまでつづいているんだ どこまでも どこまでも続く 広い広い あの空 私はこの世をせまくすごさず 広くすごそう 私の心に 一つの希望が湧いてきた 空 どこまでいっても 上を見れば 空 空…… 空は広い
「昔話」
昔、大久保に殿様がいた。或る日、殿様の倅が、池に釣りに出た。すると、大蛇が出て、倅をパクり。それを聞いた殿様は怒って、その池を破るため、向こう側にシャジキをかけて見ていた。池は遂に破れた。すると中にいた大蛇は驚き、大きな赤牛になって、ぐんぐん、ぐんぐんと逃げていったそうだ。その池の近くに、もう一つの池があった。怪しいと思って、殿様は、この池も破った。すると中からもう一匹の蛇がいた。その蛇は、臼になって、デンゴロデンゴロと転がっていったそうだ。 この話は、半分本当の話だそうだ。この中に池が二つ出てきたが、「女池」と「男池」という名前だ。その池は、今でも残っている。そして殿様がシャジキをかけて見ていたところの名が、シャジキ平と名がある。池の両方とも破った跡がある。
「山伏」
ある村に、山伏という人が住んでいました。一日、何軒かの家へ、豆をもらいに回りました。何軒か回って、豆をもらっていたうちに、夜になりました。どこかの家に泊まろうとしました。けれども、どこの家の人も、山伏を泊めてくれません。 山伏は、困ってしまい、ある一軒の家に泊めてくれと聞いたら、直ぐそこに堂があるから、そこへ泊まれと教えた。山伏は、喜び堂の中に入った。 中々寝付けなかった。そこに、チーンカモモモンホーイホイという鐘の音がしました。山伏は、怖くなり、布団の中に潜っても、よく聞こえてくるので、しっかりしっかり、布団の中に潜りました。でも、鐘はだんだん堂に近付いてきます。そのうちに堂の近くに鐘が来ました。山伏は、怖くてたまらなくなったので、窓から逃げていったとさ。いちごさけもしたなべ、下ぽこんとせ。
「福正寺」
昔、あるところに、福正寺というお寺の坊さんが、池谷、大久保、楢の木の三集落の方に来たときのことです。冬の雪の多いとき、福正寺というお寺様が、寺に帰る途中に、今の桂谷薬師で吹雪のため死んでしまった。それで、今でも桂谷薬師を福正寺と言っている。
「お爺さんと狸」
あるところに、お爺さんとお婆さんがいました。お爺さんは、山へ薪を切りに行くので、お婆さんは、お爺さんに焼き餅を作ってやりました。お爺さん、それを持って山に出かけました。お爺さんが、だいぶ木を切っていたら、お腹が空いたので、お婆さんが作ってくれた焼き餅を食べていると、狸が出てきて 「じさが焼き餅食うと、俺のお腹が、ヒクヒク動く」 と言って、邪魔をするので、お爺さんは、とうとう焼き餅を半分だけあげました。狸は、嬉しそうに、それを持って林の中に入って食べました。 お爺さんは、はが悪いので、早く餅を食べられませんので、また、狸が出てきて、お爺さんのお昼を邪魔するので、また、お爺さんは、焼き餅を狸にやりました。こうしてお爺さんは、とうとう焼き餅半分過ぎを、狸に取られてしまいました。 それでお爺さんは、悔しくて悔しくてたまりませんでした。そして、お爺さんは、いいことを思い付きました。お爺さんは、罠をかけて家に帰りました。 そして、その明くる日、行ってみると狸は罠にかかっていました。そして、お爺さんは、狸を持って家に帰りました。そしてお婆さんに見せて、今日は狸汁にして食べることにしました。そしてお婆さんとお爺さんは、餅をつき始めました。 お爺さんが、あまり難儀そうなので、ぶら下がっていた狸が、俺がついてやると言って、下ろしてくれと言うので、とうとう、下ろしてやりました。そしたら、狸は、お婆さんの手をはたいて、逃げてしまいました。
「猿と三人の娘」
あるところに、お爺さんと三人の娘がいました。お爺さんが、山に種を蒔きにいったてや。そして、お爺さんが、あまり精が切れるので、休んでいたら、猿が出てきて 「爺、わるいろい」 と言ったてや。ほしたらな、じっちゃん、わるいやと言った。 「ほうせば、お前の家にいる娘を一人くれたら、蒔いてやる」 と言った。そしたら、お爺ちゃんは、 「よし、じゃあ、やるから蒔いておくれ」 と言ったら、猿は、一生懸命に蒔いて、やっと終わった。 「じゃあ、明日もらいに行くから、用意をしておいてくれ」 と言って、どこかに行ってしまった。困った、困ったと言いながら、考えていたら、いいことを思い出した。 お爺さんは、家に行ったら、まだ誰もいなかったので、お爺さんは部屋に入って、難儀そうに、唸っていたこて。娘が帰ってきて、 「お爺さん、どうしたの」 と言ったら 「腹が痛くてかなわないので、山からあがってきたんや」 一番上の娘が 「じゃ、薬を持ってくる」 と言ったら、 「薬で治る病気じゃないんだよ」 と言ったら、二番目の娘が 「じゃ、お茶を持って行ってやる」 と言ったら 「お茶なら要らない」 と言った。 「じゃあ、」なにをのめば治るのですか」 と聞いたら 「むこうの山の猿が、おらの娘を一人、嫁に欲しいと言ったので、難儀なったんや」 と言った。お爺ちゃんは、一番上の娘に 「お前は、どうだい」 と聞いたら 「いやだよ」 と言った。二番目の娘に聞いたら 「私も、いやだよ」 と言った。お爺ちゃんは、あと一人だ。最後の娘が、いやだと言ったら、どうしょうと思って、一番下の娘に聞いたら 「お爺ちゃんのためなら、行ってもいいよ」 と言ったので、お爺ちゃんは、ホッとして病気なんか、吹っ飛んでしまいました。 「じゃあ、さっそく準備しるぞ」 そう言って、準備をしてやった。そして、よそに行く時が来たので、下の娘は、山にでかけたそうだ。
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