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    「泉の赤狐」

               
          佐 藤 悟 郎


 昔のことです。山の麓に、物思いに耽るのが好きな男が住んでいました。名前は吉兵衛といいました。仕事の合間に、時間さえあれば、何か、美しいものを思い浮かべている男でした。吉兵衛は、いつも物思いから覚めて、世の中のものを見ると、訝しげな目を開き、世の中のことをけなしていました。
「何だ、見るもの、聞くもの、汚いものばかりじゃないか。」
そう言わない日は、ありませんでした。

 夏も終わりのある日、吉兵衛は、村の連中と、山裾の草原に仕事に出かけました。吉兵衛は、仕事をしている時は、それこそ何も考えずに、一生懸命にやる男でした。みるみる間に、夏草は刈られていきました。そして束ねて、山高く積み重ねました。村の連中の二倍も早くやり、連中に声をかけました。
「おい、村の衆、どうだい、俺の草の山は、磐梯山より綺麗じゃろ。」
そうすると、村の連中の中から
「馬鹿言え、そげえな積み方じゃ、形が悪いがな。」
そうすると、吉兵衛は、その夏草を積み変えました。そして、また村の連中に言うと、また、同じ返事が返ってきました。吉兵衛が、その夏草を一生懸命に積み変えても、同じ返事しか返ってきませんでした。

 村の連中は、振り向きもしないで、地面に吐き捨てるように言うのです。いつもそうやって、吉兵衛が仕事をしない間に、自分達の仕事を、吉兵衛より多くしようと思っていたからです。
「馬鹿野郎。見てないで、なにこく。」
吉兵衛は、とうとう怒って、仕事にかかりました。そして日が一番高くなるまでに、村の連中が一日かかってもやれないほど、夏草を積みました。

 吉兵衛が若い時には、村の娘も、吉兵衛に思いを寄せていた者も多くおりました。だけど、美しいものだけが好きな吉兵衛は、自分に結婚の申し込みがあると、その娘の前で
「お前みたいな、痘痕を一生見てられるか。俺には、俺の思っている、もつと、もっと、綺麗な娘が良いんだよ。」
そう罵って、村の娘など相手にしません。だから娘達が、吉兵衛に思いを寄せても罵られて断られるのが怖くて、誰も吉兵衛の名を口に出す者はいなくなりました。そしていつの間にか、吉兵衛は、三十を過ぎてしまいました。それと共に、吉兵衛は、段々と思いを美しいもの、美しいものをと思うようになってきたのです。

 昼になって、皆が弁当を開き出すと、吉兵衛は、それを見て言いました。
「何だ、お前等は、こんげえとこで飯食うのかえ。こんげえとこより、森の中の泉の側が綺麗だぞ。誰か、行かんけえ。」
誰も行く者がいないので、吉兵衛は一人で、森の方へ歩いていきました。吉兵衛は、人里離れた森の中が、それでも好きな方でした。そうは言っても、それは泉のある辺りだけでした。高い日が、地面に木の陰を踊らせていました。

 泉は広い池のようになっており、辺には白玉の砂利が縁に沿っていて、いつも絶えることのない草花が泉の周りを包んでいました。昼の日差しは、眩しいほどに泉の水に跳ね返り、周りの木々は、浅い緑になっていました。泉の噴出する波は、快く岸辺に寄せ、静かな泉の周囲には、鳥が喋るのを止めて日和を楽しんでいました。泉から流れ出す小川のせせらぎが、静かな森に響いているだけでした。

 暫くの間、吉兵衛は、木の陰に立って、つくづく泉とその周囲を見渡しました。それから自分で拵えた弁当を開きました。美味しい物、できるだけ綺麗に見えるように、彩り豊かな弁当でした。明日は、もっと美味しい物を拵えようと思いながら食べました。昼前に、一生懸命に働いたためか、弁当を食べてしまうと、急に眠気が差し、淡い緑の草の上に寝転がってしまいました。

 そよ風が、どこからともなく、桃色の花びらを運んできました。そして吉兵衛の顔に、ポトッと落ちました。吉兵衛は目を覚まし、その花びらの香りを嗅ぎました。するとどうでしよう、水の音がするではありませんか。吉兵衛は、急いで泉の縁に目をやって、何の音か捜しました。白い玉石の中に、緋色の線が一本、柔らかくあるのに驚き、じっと見つめました。それは狐だったのです。頭の頂から背の頂き、そして尾が緋色の狐だったのです。緋色の狐の体には、柔らかそうな、白い玉石より純白の毛並みをしておりました。

 それは、今まで見たことのない狐でした。水音は、その赤狐が、前足で水を掬っている音でした。吉兵衛は、思わず声を出しました。
「おい、狐や、綺麗じゃのう。」
すると、狐は吉兵衛を見返しました。吉兵衛は、またもやドキリとしたのです。その優雅な狐の眼差しが、人の眼差しのように澄んでいて、光るのが見えたからです。
「綺麗な目をしているのう。」
狐は、頷くようにお辞儀をして、走り去っていきました。

 それから吉兵衛は、この世の中で一番美しいものは、泉の赤狐だと思いました。心に適った美しいものだと思ったのです。吉兵衛は、泉の縁に来る赤狐を見ようと、毎日のように泉の周りの木陰に隠れ、泉の縁を見渡していました。幸いにも、吉兵衛は、赤狐を時々見ることができました。ある日、吉兵衛は、大切な仕事を済ませて、急いで泉の木陰に隠れていました。今日こそ、赤狐と親しくなろうと思っておりました。夕暮れになって、段々と暗くなってくるのに、赤狐の姿が現れませんでした。吉兵衛は、仕事の疲れが出て、草原の上で眠ってしまいました。

 吉兵衛は、水の滴り落ちる音に目を覚ましました。空が真っ赤に焼けていて、泉も真っ赤な色をしていました。その中に、純白の狐の姿が目に写りました。吉兵衛は、声を出すまいと、手で口を押さえて見ていました。

 赤狐は、前足で顔を撫でていました。純白の毛色が、桃色帯びてきたと思われるころ、赤狐は、真っ赤に光る泉に飛び込みました。光るものが空中高く、円を描いて水面に落ちていく様子でした。真っ赤な水は、黄金に変わり、輪を描いていました。一つの音を残し、赤狐は、水に沈んでしまいました。物音しない、夕空の下の泉は、静かすぎる程でした。

 長い時間が流れました。水面に泡が出てきたかと思うと、水面上に淡白い渾沌としたものが現れました。それは若い女の姿に変わり、水面を滑るように岸辺に近付いてきました。一糸纏わぬ姿が、岸に着いたと思うころには、淡い桃色と白の着物を纏った姿になっていました。

 陽が落ちた森は薄暗く、空には幾筋もの筋雲が流れていました。泉の水も色を失いかけ、岸辺の若い女の姿が、鮮やかに浮かびました。
「狐が、化けおった。化けた。」
吉兵衛は、呆然と見つめていました。女の姿が美しく、逃げもせずに見とれていました。首を傾け、後ろ髪を高く撫で上げて、結わえようとしていました。少し面長の顔のように見えましたが、眉が心地よいほどの厚みで、二重瞼の眦を伏し目勝ちにしていました。姿も幾らか細目でしたが健康そうでした。

 若い女は、足元を高く見せ、歩き始めました。吉兵衛は、木の陰から陰へと移りました。寂寞とした森の中に、鮮やかな姿を見せ、女は歩いていました。若い女は、袖を掲げ吉兵衛の方に振り向きました。そして、逃げるように駆け出し、森の暗闇に消えてしまいました。

 晴れ渡った翌日に、吉兵衛は、森の中の泉に向かって歩いて行きました。花の香りが、吉兵衛を包みました。一つの期待を胸に、何とは知れず、軽やかに歩いていました。明るく水面が輝く、泉の辺に出ました。青い空の色が水面に写り、岸辺の白い玉石も柔らかな白さを見せ、岸辺を取り囲む草花は、鮮やかな緑を見せていました。泉から流れ出る小川のせせらぎが木々に木霊し、鬱蒼とした森に囲まれた泉は一層鮮やかに浮かんでいました。

 吉兵衛が、泉の辺を見渡しますと、緑の草花の中に、若い女の白い姿が目に入りました。木陰の下で、一人で花を摘んで遊んでいるようでした。吉兵衛は、昨夕の女だと分かると、大きな木の陰に隠れようとしました。若い女は、吉兵衛の姿を見付け、手を高々と上げて手招きをしていました。吉兵衛は、手招きする娘に近づいていきました。娘は歌を口ずさみ、首を縦にゆっくりと振って吉兵衛を誘っていました。吉兵衛は娘の前に立ちはだかるように立ち止まりました。娘は言いました。
「突っ立っていないで、腰を下ろしたらどうなの。」
そう言われて吉兵衛は、怪しみながらも娘の前に腰を下ろしたのです。
「お前、綺麗じゃのう。名前は何というのだ。」
そう言う吉兵衛を見て、娘はにっこりと微笑みました。
「私の名前、ウツギと言うのよ。卯木の花のウツギというのよ。」
吉兵衛は、近寄ってみれば目の輝き、肌の白さ、髪の柔らかそうな姿を見て、惚れ込んでしまったのです。でも狐が化けたものなので、所詮どうにもならないと思いました。
「おらは見たのだ。赤い狐が化けたのを。」
ウツギは、そう言われても顔色を変えませんでした。
「あんた見たの。ほら尻尾もあるよ。」
そう言ってウツギは片手を後ろに回して、赤毛の尻尾を見せました。
「ウツギと言ったな。残念だな。でもお前は本当に美しい。俺は、お前が好きになった。」
そう吉兵衛が言うと、ウツギは小さな声で
「そうか、私を嫁にしてくれるか。」
と言ったのです。吉兵衛は驚きました。いくら何でも狐を嫁にすることはできないと思ったのです。
「それは考えなければならん。狐の姿に戻れば、俺は笑い者になる。」
それを聞いたウツギは、少し悲しそうな顔を見せました。吉兵衛は、無言でウツギをの顔を見続けました。
「そろそろ戻らなくては。」
ウツギは、そう言って森の方へ歩いて行きました。いつの間にかウツギの姿は、赤狐になっていたのです。

 吉兵衛は家に帰り床に寝転んでみると、ウツギの姿が浮かんできました。
「狐でもいい。時々ウツギの姿に戻ってくれれば、それでいい。」
と思ったのです。思い悩んでいる吉兵衛の様子を見て、吉兵衛の母は心配したのです。母は、寝転んでいる吉兵衛に話しかけました。
「どうしたんだ。そんなに思い悩んで。話を聞かせてくれ。」
母が尋ねると、吉兵衛は悲しそうな顔を母に見せて、ウツギの話をしたのです。母は言いました。
「ウツギの話を私は知っていますよ。昔、京の都にウツギという美しい娘がいたが、赤狐に取り憑かれてしまい姿を消した。赤狐に憑かれた者は、年もとらずに生き続けると言うことだ。」
そう話す母は、静かに吉兵衛を見続けていました。
「おっかあ、狐がウツギに化けたのではないのか。」
と、吉兵衛は元気なく母に聞いたのです。母は言いました。
「ウツギの姿を見た者は、昔もいたということだ。赤狐が死んでしまえば、ウツギは娘として甦るということだ。でもな、赤狐は千年も生き続けるという狐だということだ。」
吉兵衛は、母の話を聞いて、少しは分かってきたのです。ウツギは赤狐ではないこと、赤狐が死んでしまえばウツギは人として生き返るということが分かったのです。どうすればウツギが甦るのか、考えても及びつきませんでした。
「もしかしたら、ウツギが知っているかも知れない。」
吉兵衛は、そう思うとまたウツギに合う決心をしたのです。

 吉兵衛は、泉を訪れましたが、赤狐もウツギの姿も見ることができませんでした。一月も過ぎた爽やかな日でした。泉の傍の草花の中にウツギの姿を見付けました。吉兵衛が近寄っていくと、浮かない顔でウツギは吉兵衛を見つめました。吉兵衛は、ウツギの前で腰を下ろして言ったのです。
「ウツギ、俺は決めたんだ。お前を嫁にするんだ。一緒になってくれるか。」
そう吉兵衛が言うと、ウツギは花が開いたように笑顔を見せて言いました。
「ありがとう。嫁になりたい。狐が眠っている間は、私は人の姿に変わることができるの。でも、赤狐が目を覚ますと、私は赤狐の中に閉じ込められて姿を消してしまうの。赤狐を退治しないと、私はずっと人に戻ることができない。間もなく赤狐が起きる時よ。私は森へ行くわ。よくよく考えてください。今日、とても嬉しかった。」
ウツギは、そう言うと森に向かって立ち去り、いつの間にか赤狐に変わったのです。吉兵衛は、ウツギが赤狐の中に閉じ込められていることを知ったのです。それをどのようにしたら助け出せるのか、悩みが増えたのです。

 ある日、考えながら村中の道を歩いていると、村の長老にぶつかりそうになりました。長老は、吉兵衛に
「何を悩んでいるのだ。ぶつかるではないか。」
と言ったのです。吉兵衛は長老であれば、色々なことを知っていると思いました。
「聞きたいことがある。泉に赤狐が棲んでいる。怪しげな力を持っている。退治するにはどうしたら良いのか教えてくれ。」
そう言って吉兵衛は、長老に尋ねたのです。長老は暫く考えた末に答えました。
「昔、赤狐ではないが、人をたぶらかす狐がいて、行者がきて、榊の枝を使って懲らしめたという話を聞いたことがある。」
そう長老が話したのを聞いて、吉兵衛は更に、
「榊の枝を、どのようにして使うのか教えてくれ。」
と尋ねると、長老は首を傾げ
「そんなことまで知らんわ。」
と言うと、吉兵衛の脇を通り過ぎて行った。吉兵衛は家に帰ると母に尋ねた。
「榊は、どこに行ったらあるか、知ってたら教えてくれ。」
母は、少し考えてから
「山の大きな祠の周辺にあるはずだ。お前、赤狐と争うつもりか。赤狐は恐ろしい力を持っている。止めておきな。」
と吉兵衛を諫めるように言いました。母の言葉を聞いて、吉兵衛は泉へ行くのを止めたのです。

 夏の暑い日になりました。村に天海上人という偉い行者がきているのを吉兵衛は知りました。吉兵衛は天海上人に会って、赤狐とウツギのことを話したのです。
「お前は、ウツギを助けて嫁にもらいたいのだな。赤狐は恐ろしい力を持っている。お前も力がありそうだ。二人で赤狐を退治に行こう。」
天海上人は吉兵衛にそう言って、
「榊の枝を鉈で斜め切りにしたものを数本用意してくれ。」
と準備するものを教えてくれました。

 翌日になって、天海上人と吉兵衛は泉に出かけました。道々、天海上人は言いました。
「赤狐は、怒ると大きくなる。お前は、赤狐の足か尻尾を捕まえて、榊の枝を赤狐の尻の穴に突き刺すのだ。分かったな。」
吉兵衛は、天海上人を見つめて大きく頷きました。天海上人は、ウツギが眠らないように呪文を唱えると言いました。吉兵衛は、赤狐がどれほどの大きさになるのか、どのように潜り込んで尻の穴に榊を刺すのか考えていました。

 泉の森陰に吉兵衛と天海上人の二人が潜んでいると、一時ほどしてウツギの姿が見えたのです。二人がウツギの方に近寄っていくと、たちまちウツギは赤狐の姿になりました。天海上人は、赤狐に向かって言いました。
「ウツギという娘を元に戻せ。さもないと退治する。」
するとどうでしょう、赤狐は人の丈の二倍ほどの大きさとなり、血走った目をランランと輝かせていました。天海上人が呪文を唱え始めると、ウツギが騒ぎ始めたのでしょう、赤狐は天海上人に襲いかかろうとしましたが、結界が巡らされていて天海上人に近づくことができなかったのです。

 吉兵衛は鉈を振り上げて赤狐の足を目がけて飛び込んでいきました。赤狐は牙を剥き出し、前足で吉兵衛を払い飛ばしました。吉兵衛は怯むことなく赤狐に向かっていきました。前足で払われ、後ろ足で蹴られ、尻尾で叩かれました。足の爪は鋭く尖っていて、吉兵衛は傷を負いましたが、遂に両手で尻尾を掴みました。吉兵衛は、更に両足を尻尾に絡みつけ落ちないようにしたのです。

 赤狐は激しく尻尾を振りましたが、吉兵衛は落ちませんでした。吉兵衛は懐から榊の枝を取り出し、赤狐の尻の穴に突き刺そうとしました。二度失敗し、三度目に
「南無八幡大菩薩様、助け賜え。」
と祈りを捧げると、振り回していた尻尾が一瞬止まったのです。この時ばかりと吉兵衛は、榊の枝を赤狐の尻の穴に突き刺しました。赤狐は、
「グワオー」
と大きな唸り声をたてると、身動きがなくなっていき、その場に倒れました。榊の枝が赤狐の全身に根を張り、赤狐は身動きができなくなったのです。倒れた赤狐は、苦しそうに目を開け閉じさせ、息をハアハアさせていました。

 天海上人は、尚も呪文を唱え続けていました。すると赤狐は白い煙を吐き出し、その白い煙はウツギの姿に変わっていきました。ウツギは、嬉しそうに吉兵衛に向かって歩いて行きました。天海上人は、苦しみ、悲しんでいる赤狐を見つめました。
「このままだと、お前は死んでしまう。これから悪さをしないと誓えば、助けてやろう。」
天海上人が赤狐に向かって言うと、赤狐は何度も頷きました。天海上人は、赤狐の尻の穴から榊の枝を抜き取り、呪文を唱えました。すると、赤狐にはびこっていた榊の根は消えてしまいました。赤狐は、小さくなって天海上人の前でお辞儀をしました。
「お前のお里に帰るのだ。行け!。」
天海上人に向かって赤狐がお辞儀をすると、向きを変えて走り去っていきました。天海上人は、ウツギを呼び寄せて言いました。
「お前の出で立ちからすると、二百年ほど前の娘だ。どこでたぶらかされたのだ。」
ウツギは答えました。
「京の都で、お参りの帰り道でした。」
ウツギの答えを聞いて、天海上人は哀れと思いました。
「もう父も母も、この世にはいない。縁者も分からないだろう。京の都に戻るのか。」
天海上人は、そうウツギに問いかけました。ウツギは明るい顔で答えました。
「私は、吉兵衛さんの嫁になる。吉兵衛さんも、そう言ってくれた。」
天海上人はウツギの返事を聞き、吉兵衛の方を見ると嬉しそうに頷いていました。

 三人は村に向かって歩いて行きました。村の入り口まで行くと、天海上人は旅を続けると言って山に向かって去っていきました。吉兵衛とウツギは、天海上人の後ろ姿に向かって、深々とお辞儀をしました。