幻 の 声 | 弁天堂が大きな寺の池に浮島となっている。学校の教師となったばかりの彼女が、同じ学校の男性教師と一緒に弁天堂が下に見えるお寺の境内の階段を下りてくる。男性教師は彼女に結婚の申し込みをするが、それを彼の妹が聞いていた。彼女は彼を好きだったが、彼は高校三年生で年下だった。年下の彼と結ばれるのを、彼女の母は強く反対していた。 |
想いは消えず | 小説の創作を志している地方公務員の青年が、少年時代を過ごした土地に赴任した。懐かしさに誘われ小学校の校庭を訪れて桜の幹の傷を見つめていると、和服姿の女性が彼を見つめている姿に気付いた。彼女の姿は、驚きのあまり体が硬直して身動きができない様子だった。 |
川の堤を歩いて | 普通の高校三年生は散歩をするのが好きだった。川の堤を歩いていると同級生グループに誘われ、楽しい時を過ごした。夕暮れ近くなって同級生らと別れ、彼は散歩を続けた。遠くの集落にたどり着いたころには暗くなり始めていた。そんな時にクラスの違う同学年の彼女に呼び止められた。 |
雪 の 中 | 成績優秀な小学校高学年の少女が、校舎二階の廊下の窓から雪が積もっているグランドを見つめていた。ガキ大将の彼が、グランドに飛び出し雪を蹴散らしている。案の定、服が水浸しになり、担任の先生は、彼を彼女の前のストーブの脇に立たせた。彼はストーブでズボンを乾かしている。担任教師は、難しい問題を黒板に書き、解くように彼女に言った。 |
お囃子の新助 | 江戸末期の時代、越後の田舎に横笛の好きな青年がいた。一流の笛吹きになろうと思い立ち、村で吹いていた横笛を懐に江戸に出かけた。彼を使うところもなく、歩いていると横笛稽古場に出合った。稽古場から出てきた老人は、彼の持っていた横笛は使い物にならないと言ったが、彼に稽古場で一緒に住まないかと誘った。 |
或る婦人の旅立ち | 観光地の高台の松林にある別荘地、或る未亡人が白い犬と一緒に散歩する姿があった。ある時に白い犬と見知らぬ男性と戯れるのを見た。未亡人は男性に親しみを覚え、何時しか散歩を共にするようになった。別荘まで男性は送るが、決まって誘いを断り街に向かって帰っていった。 |
戦友の息子 | 集団就職で彼は東京の草履会社に勤めることになった。彼は密かに大学の入学試験を受けた。入社後、大学受験を受けたことが社長に知れ条件付採用ということで退職となった。社長の妻である常務と娘に連れられ、新聞配達店前まで連れていかれた。大学試験の結果を見てからと彼が言って、常務と娘の三人で大学の試験発表会場まで行くのだった。 |
酔いどれの子供 | 新潟県の北蒲原地方の小さな漁村のある村で、酔いどれの父を抱える母と息子がいた。村で建設会社を営む社長は、酔いどれと戦友で社員として迎えていた。社長の娘は、酔いどれの息子が真面目に家事や勉強をしているのに好意を抱いていた。 |
太 田 川 | 大学を卒業して五年振りに故郷に帰った彼は、春の心地よい天候に誘われ、太田川の土手を歩いて友人の家を訪れた。昼食後に友人と太田川で釣りをしていると、旧友の二人連れに出合った。彼は、夕方に旧友宅を訪れることを約束して別れ、約束どおり旧友宅を訪れたが、女中に門前払いをされてしまった。 |
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