雪のある城 | 凋落した足軽侍が、正月の雪の降る日に若き日を思いだし重役の屋敷を訪れ、そこで会った重役の娘のやり取りに、肩を落とし雪の降る夜道を足軽長屋へと引き返していく。 |
河 霧 | 川に霧が流れる。彷彿として川面に娘の姿が浮かんでいる。その思い出を追いながら少年は日を過ごしていった。母が病で倒れ、ふとしたことから娘の母の世話を受けた。人生の訝しさを感じながらも、娘の熱い思いを胸にして少年は東京に向った。 |
貧しい少年の生活は、母の内職で支えられていた。彼は大学へと進んみ、同級生だった娘の思いを心に秘めていた。幾年か過ぎた小正月に、彼は突然舞い戻って来たが、娘が嫁に行くという話に愕然とした。娘の花嫁行列を、大きな杉の木陰で見送るほかなかった。 |
大学を卒業して久しぶりに戻った故郷だった。テニスコートで優雅に戯れている島田がいた。娘とは幼いころから仲が良かった。それも縁が切れたと思った。夜になると娘が訪れ、酔っ払った娘を家まで送り届けた。娘の祖母の厳しい言葉で、彼は二度と娘に会わないと思った。 |
幼友達が、高校生になって急に言葉を交わさなくなった。正月の初詣で彼女は彼からスルメを分けてもらった。春を迎え、彼は汽車に乗って田舎の大学受験に向った。彼女と一緒になり、明るい気持ちで大学受験を済ませた。帰りの汽車の中で、彼女の思わぬ問いかけに戸惑った。 |
里 の 秋 | 夜の小学校の教室で幸子は涙を流しながら、彼一人に向って「里の秋」を歌った。そして急に駆け出して姿を消した。それ以来幸子の姿は小学校から消えてしまった。そんな思いを抱きながら、青年となった彼は、思い出をたどるように池を見つめていた。 |
少女とお兄様 | 祭りの夜に、ある青年と少女が道連れとなった。肩車をして綿飴を買って、少女を家まで送った。少女に求められるまま家を訪れた。その日は、少女の家でピアノの演奏会のある日だった。少女と少女の姉は、彼がピアノ演奏をすることを願った。彼はピアノの前に座り……、 |
机の上の写真 | 彼は、海で溺れている少女を助け上げた。少女は、彼の面影を追いながら、彼と思われる人が在学する大学へと進んだ。彼は、目立たない学生だった。彼女は、心に止めながらも他の学生に惹かれていった。ある日彼女は、彼の下宿を訪れた。 |
陽 春 | 夢に見た大学の校舎、手を上げて走ってくる女性の姿があった。高校の通学で、親同士が戦友仲間の娘とよく一緒になる。彼は夢に見た大学へ進学することにした。大学に入ると、夢で見た木陰で休んだが、女性の姿はなかった。そしてまた春を迎えた… |
河畔の湯治場 | 河畔の湯治場で療養していた少年、その前に湯治場の孫娘が現れた。体が弱いが、頭の良い娘だった。少年は娘に憧れを持ち、ある日一緒に川縁に遊びに出かけた。娘は倒れそうになり、少年は背負って湯治場まで連れ戻った。心配そうに覗き込む少年に、娘は微笑を浮かべた。 |
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