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新潟梧桐文庫集 第六集



口 笛

 ある町に古いお寺がありました。住職の中学生の娘は、ピアノの練習に励んでいました。秋の夜、ピアノの手を休めている娘の耳に、どこからともなく口笛が聞こえてきました。口笛は寂しい音に変わっていき、娘は口笛の主に会いたいと思うようになりました。


お 盆

 夏の暑いお盆を迎えました。その寺にも身なりを整えた人々が、お寺の横の墓地に墓参りをしておりました。そんな中、いかにも貧しそうな身形の少年が、力無く墓地に向かって歩いていました。墓参りをしている富豪らしい家族、少年はマッチを借りたいと声をかけたのです。


道端の花

 高校を卒業しての秋、代用教員として中学校の分校に赴任した。薄日の差す土曜日に、彼は山から谷間を歩いた。美しい景色に目を輝かせながら、楢の木集落に向かっていた。暫くすると、曲がりくねった道の前方に、母に連れられ時々振り返える小学低学年生の姿が見えた。


山の野良仕事

 山の学校の先生は、土曜日になると町へ帰っていく。代用教員の彼は、山の景色が好きで宿舎に残って散歩をする。ある日曜に山の稜線に上がり、道に迷ってしまった。藪を掻き分けていくと畑地に出ることができた。その畑地では、二人の娘を連れた両親が働いていた。


 冬の寒い日、小学校で暴れん坊生徒が殺された。最初に見つけた先生が、疑われ警察に逮捕された。彼は真実を述べることがでず、黙秘を続けていた。社会的な非難が多く、彼は死刑の判決を受けた。そして死刑の執行がされることになった。


音楽会での私

 国内の有名楽団の演奏会が開かれた。私は、音楽家気取りで会場に入った。入口でもらったパンフレットを見たが、私の知っている曲はなかった。隣を見ると、上品そうな女性に連れられた、蛙のような目付きをした子供がいた。演奏が始まり、目を閉じた私を疑った…


帰省列車から

 盆の帰省列車は、蒲原平野を北に向かっていた。車内は混んで、彼は人混みの中で立っていた。一人で父の墓参りのため、父の実家へ行く途中だった。降車駅近くで人を掻き分けていると、一人の女学生が出ようとしていた。彼は女学生の手を引いて、デッキまでたどり着いた。


砂 塵

 忽然と砂漠の中に砂塵が舞い上がり、十人のアラビアの騎士の姿が現れた。彼等は彼方の地、聖地に向かって進んでいた。空に聖戦旗を明らかに掲げ、ひたすらに進み続けた。騎士達に従うものは、夥しい数になった。従う者は、神の騎士達だと疑わなかった。


英俊と紅蘭

 山の中で紅蘭は、絵を描いている英俊と出会った。二人は道に迷っていると、老人に出会った。老人の庵で一夜を過ごし、別れの際に老人は二人にそれぞれ笛を与えた。都を目指して街道を歩いていると、盗賊に襲われてしまった。隙をみて、二人は寺に駆け込んで助けられた。


朝の旅立ち

 彼は、海辺の町の中学校の教師として赴任した。ある時、お茶屋の主人が囲碁好きで相手をした。それが縁となって、時間があれば毎日のように囲碁を打つようになった。お茶屋の娘は、彼に好意を持ってお茶や菓子などを脇に置いた。


 

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