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新潟梧桐文庫集 第五集




生き写し

 雪深い山の集落で、千代は誰の子とも知らぬ赤子を産み落として死んでしまった。千代と心で結ばれていた一郎は、大きく落胆した。一郎は毎日のように千代の墓掃除をしていた。ある秋の夕暮れ、千代の墓掃除をしている一郎の前に、まるで千代の生き写しの娘の姿が現れた。


藪 入 り

 庄屋長太郎は、浪人平九郎の力を借り貧しい村を豊かな村に変えることに成功した。それを知って有力な平根の庄屋は、娘の初音を嫁入りさせた。平九郎の子息が初音に想いを寄せ、初音は思い悩む日が続いた。長太郎と初音は、別れることになり平根の庄屋の屋敷に向かった。


微笑み 

 あるバーの娘に好意を持った中学校教師、彼は楽しい思い出を作りながら、娘に疑いだけを持ちながら、僻地の学校へ転勤した。久し振りに訪れたその町で、バーに立ち寄ったが娘の姿はなかった。バーのマダムから、意外なことを耳にした。


谷卯木の花

 大きな川の断崖の上に中学校の音楽教師の家がある。その娘は毎日激しいピアノの練習をしていた。春になって庭の柵の外に谷卯木の花が美しく咲いていた。ピアノの練習に耐えかねた娘は、崖の柵を跳び越えようとした。その時一人の少年が呼び止め、谷卯木の花を手折り娘に与えるのだった。


入院その日の少女

 彼は高校生で、足の骨折のため町の病院に入院していた。入院して数日経った頃、盲腸炎の手術が終わったばかりの、女子校生が隣のベッドに運ばれてきた。全身麻酔のためなのだろう、苦しそうな声が伝わってきた。夜になっても、荒い吐息が聞こえてくる。明日になれば、苦しみは嘘のように消えるはずだと彼は思った。


琴とある師匠

 一人の少女が、子供達が騒ぎ、煩い会場で琴の演奏をしていた。琴の師匠は、そんな少女に絶縁を言い渡した。少女は、悲しみを抱きながら演奏を続けた。彼は優しく少女に声をかけた。譜面を取り出し、少女にその曲を弾くことができるかを確認した。そして彼は尺八を取り出し、一緒に演奏を始めた。


女子銀行員

 毎日のように集金に訪れる女子銀行員に、彼は好意を抱いて見つめていた。ある日、彼女と違う銀行員が訪れ、集金をしていった。彼は不安を感じて、用を作って銀行に赴いた。銀行の窓口はおろか、銀行内に彼女の姿を見付けることができなかった。彼は銀行を辞めたのではないかと不安を抱きながら、職場に戻るのだった。


卒業生からの手紙

 高校の教師である彼は、卒業した女子生徒からの手紙を読み終えた。勉強の好きな生徒だったが、大学に入ってからの勉強の悩みが綴られていた。全ての勉強を修得しなければならないが、それが困難であるとの内容だった。彼は、全ての分野への挑戦、理想であるが不可能だと思った。純粋な卒業生の思いに、どう答えるのか思い悩んだ。


川岸のすみれ草

 幸子の夫は、裁判官を退職後病死し、長男と共に実家に戻り後を継いだ。晩秋のある日、玄関先を掃除している幸子の前に、小脇に荷物を抱えた田中と名乗る男が姿を見せた。男は、幸子に小学生の頃の同級生だと言い、土産と言って東京の人形焼きを出した。幸子が思い出せずにいたが、それにお構いなしに一枚の絵を置いて去って行った。


束の間の想い

 彼は妻と一緒に、街に出かけた。そして中学生の頃、仲の良かった真理子と出会った。彼女は夫と一緒で、幼子の手を引いていた。当時、彼と彼女は、同じ鉄筋の市営アパートに住んでいた。彼が勉強の合間に、窓から下の公園を見ると、彼女が女友達と話してた。彼は、手招きをして見せたが、彼女は気付く様子もなかった。




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