苦 い 涙 | 彼の職場に、髪を波立たせた美しい女性がいた。彼は、彼女が好意を抱いていると思っていた。彼女の二十五歳の誕生日のお祝いに誘った。彼女の誕生日は、雪が降り止まなかった。それを理由に彼女は、彼の誘いを断った。翌日、同僚が彼女の誕生祝いをしたのを知った。 |
端午の日の手紙 | 私は列車で故郷に向かっていた。車窓から故郷の美しい丘が、懐かしく見えた。彼女に会いに行くためだった。丘の公園への階段を上り、綺麗なある富豪の墓地に着いた。端午の節句に会いたいと、彼女に手紙を出した。返事はなかったが、こうして待つより仕方がなかった。 |
山 彦 | 近くの峠に登り、遠くに山肌が白く見える山が見えた。残雪のある涼しい山登思い、その山を目指して出かけた。山の中腹の集落の寺にたどり着き、山の残雪と思っていたのは岩肌だと知った。折角と思い、山に登ることにした。そして山の頂で、不思議なことに気付いた。 |
私の妹は、高校生となると故郷を離れ、新潟に移り住んだ。大学受験勉強の合間の夏休みに、友達を連れて妹と故郷に戻った。夜になって三人で村の盆踊りに出かけた。村に住む友人の彼は、櫓の上でお囃子の笛を吹いていた。妹が、彼に深い恋心を抱いているのを知っていた。 |
山よりの便り | 山の中学校分校に代用教員として勤務した青年が、生徒達の心に溶け込んでいく。秋から冬にかけての短い間の経験であったが、別れの時に耐えがたい寂しさを感ずる。その間の思いを綴った友達への手紙である。 |
ある中年社員 | 平凡なサラリーマンの彼は、ある夜暴漢に襲われている若い女性を救った。男嫌いと思っていた妻が、置き手紙をして好きな男と駆け落ちをした。中学生の息子は部屋で眠っていた。職場の課長と今後の話をし、眠りに陥った。翌朝起きてみると長男が食事の用意をしている。 |
越 後 路 | 坂本の地で、大学を中退した青年が父が座長の旅芸人の一座に転がり込んできた。父は、私に勉強を教える条件で入れたのだった。青年は芝居を書く一方で、私に厳しい勉強を求めた。私は、一度勉強を投げ出したが、知識の尊さを知り、再び勉強の教えを請うことになった。 |
源 治 の 寺 | 彼は、高校二年になってクラス替えがあり、彼女と通路を隔てて隣り合わせとなった。筆箱を忘れた彼は、彼女に鉛筆を借りた。数日経った歴史の授業時間に、彼は彼女がチョコレートを口にしているのに気付いた。教師の目を盗んで、彼女からチョコレートをもらい口に入れた。教師の質問が飛んできた。 |
野 武 士 | 戦国の世、彼は野武士集団の頭だった。盗賊同様、地域一帯を荒らし回った。ある時、領主から誘いがあり、領主の家来になり武士となることを決めた。従う者を集め、領主の城に向かった。その途中、有力な盗賊集団に辱めを受けようとする、二人の女を救い、その女とは領主の城下で別れた。 |
泉の赤狐 | ある村に働き者の若者がいたが、美しい娘に憧れていた。ある時、泉の辺に美しい娘の姿を見て恋い焦がれてしまった。ところがその娘は赤狐に囚われていることを知って、救い出そうと思った。 |
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