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新潟梧桐文庫集 第七集



生き残った長男

 彼には、別れた妻との間に長男と長女の二人の子供がいた。彼は子供を愛しており、時々別れた妻の目を盗んで子供と会っていた。ある日長女が交通事故に遭って病院に入院した。彼は病院を訪れ長女を見舞ったが、別れた妻が現れて病室から追い出されてしまった。


甦る神・病院

 乗用車同士の正面衝突事故があった。彼女を助手席に乗せた青年が、対向車線にはみ出しての事故だった。事故の相手は一人で、三人とも病院に運ばれたのです。青年は軽傷でしたが、医師は彼女が亡くなったと告げました。警察の検視、そこに相手の人が現れました。


天満宮のふもとに

 彼は、天満宮の社から抜けて、海辺へ出る散歩が好きだった。夕暮れ、陽の没するころに、若い人が歩いているのを見るのも、親しい気持ちを起こさせた。土曜の午後になると、学生の姿が多くなる。その女学生が、ひどく微笑んで、誰にも知られないように軽い頷きを見せた。


松   風

 蒋童は、多くの内弟子を残し、突然と旅に出た。訪れた町に大きな河が流れているのを知っていた。夜になって月明かりを照り返す大河の流れを見つめた。河の堤を歩いていると、琴と尺八の音が聞こえてきた。琴は爪弾き、尺八はレコードの音だと思った。


 水沢は、植村部長の誘いに乗り、雪の降る銀世界の町の中を一緒に飲み歩いた。二軒ほど店を飲み歩き、その後高級割烹へと入った。呼んだ芸者の姿も消え、帰らなければならい時だと知った。二人は、勘定をするため、帳場へと行った。帳場には、髪を結い上げた若い娘がいた。


沢の上の御堂

 真夏の暑い日、私は近くの山に行き、ある沢に迷い込んだ。小一時間ほど歩くと、二メートルほどの高さの滝に行き着いた。滝の上の草原で寝転び、そして眠りに陥った。私が目覚めたのは、雷の音を聞いてだった。大粒の雨が降り始め、林の中に小さな屋根を見つけ、一目散に走った。


熊野若宮様

 熊野若宮神社があり、毎年九月に祭礼が行われた。月影組の新吉が龍神組に襲われて死んでしまいました。今年の祭りで月影組は新吉の敵討ちを考えました。龍神組が挨拶をしている時に強い雨が降り、雨が上がると月影組に猿の仮面を付け、鮮やかな法被姿の若者が見えました。


山奥の変わり者

 山奥の呪われた家に、老婆と美しい娘と美しい男が棲んでいた。そしてもう一人、押し黙った大男の変わり者がいた。その変わり者は、自分の父親を殺され、亡骸を抱えて呪われた家に住みついた。春になって隣国との争いが起こり、隣国の兵が村に入り、村は合戦場となった。


雪の中の彷徨

 寒い冬の日だった。人影も見当たらない郊外の野原の雪道を、一人の女が歩いているのが見えた。若い娘で、遠くの町に向かって歩いていた。通りかかった私は、車を止めて娘に声をかけ、助手席に娘を乗せて暖房を少し強くした。毛皮のコートを着ているが、娘は震えていた。


幻 と …

 父親は、娘が病気だと思った。実際、そうだったかも知れなかった。母親が死んで以来、娘は黙りこくったままだった。何年も過ぎた、この晩秋だった。「父は、お母様を愛していなかった。」娘の日記に書いてある。娘の憤りの理由は、簡単だった。


 

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